差し歯とは?
入れ歯・ブリッジ・
インプラントとの違いと
選択のポイント
「差し歯」は、虫歯やケガなどで歯を失ったときの補綴(ほてつ)治療の一種です。補綴治療には、差し歯のほかにもインプラントやブリッジ、入れ歯がありますが、それぞれどのような違いがあるのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。今回は、差し歯について詳しく解説します。
差し歯とは

まず、差し歯とはどのような治療法なのかを確認していきましょう。
差し歯治療の概要
「差し歯」とは、表面に出る上部構造および支柱部分、歯根に差し込む心棒(ポスト)が一体となった人工歯です。歯根部分が残っていることが条件となるため、歯の神経を抜く根管治療を施した場合などに適用となります。また差し歯は、保険が適用される治療法なので、費用を抑えて補綴治療を受けたいときの選択肢の一つです。
差し歯とクラウン(冠)の違い
差し歯に似た用語として「クラウン(冠)」があります。結論からいうと、現在の歯科医療の現場で差し歯というと、クラウンだと考えて差し支えありません。
本来、クラウンとは1本の歯全体の被せ物となる人工歯です。残存する歯根部分を土台に「コア」という支柱部分を差し込み、その上から人工歯を被せる仕組みなので、一般的には「被せ物治療」と呼ばれます。
差し歯とクラウンの違いは、構造と治療工程にあります。従来の差し歯は、土台と上部構造が一体となっており、治療箇所の状態によっては歯の根っこを大幅に削らなければなりませんでした。一方クラウンは、支柱と被せ物が別々です。2つに分けて取り付けるため、歯を大きく削る必要はありません。
このように、差し歯とクラウンは似てはいるものの、厳密にいうと異なる治療法です。しかし、歯を削る範囲をできる限り減らすという観点から、差し歯治療が適用となるケースの多くでクラウン治療が選択されるようになりました。
差し歯の値段
差し歯は、保険が適用される治療法です。保険適用の差し歯は3割負担となり、一般的には約3千〜1万円以内で治療できます。自由診療となる素材の差し歯を選択する場合は、素材や治療を受ける歯科医院によっても異なりますが、約8万〜20万円が相場です。
差し歯治療の適用制限
差し歯治療は、次のケースに該当する場合は適用できません。
- 歯根が十分に残っていない
- 歯周病が進行している
差し歯は、天然歯の根っこ部分を支柱として人工歯を差し込む治療法です。そのため、根っこがない、もしくは少なかったり、ヒビが入っていたりすると適用が難しいといえます。また、歯周病が進行していると、歯根部分がぐらついてしっかり固定できないので、まずその治療が最優先です。
▼おすすめ関連記事
差し歯の種類

一口に差し歯といっても、その種類はさまざまです。ここでは、差し歯の種類について解説します。
コアの種類
歯根に差し込むコアの素材は、大きく分けて金属とプラスチックの2種類です。いずれも基本的には保険が適用されますが、レジン製のコアをファイバーポストで補強するなど、機能性をより高める治療を行う場合は保険適用外の自由診療となります。なお、ファイバーポストで補強したレジンコアは、天然歯に近い強度となるため、歯根の破損防止が可能です。
人工歯(クラウン)の種類
差し歯の人工歯のうち、保険適用になるのは金属とプラスチックの2種類です。一般的に、奥歯には金属の人工歯が使用されます。金属パラジウム、いわゆる銀歯は基本的に保険適用です。より品質のよい金合金やメタルボンド(金属焼き付け陶材)などを選択すると、自由診療となります。
一方、前歯といった目立つ部分によく使用されるのは、レジンと呼ばれる白いプラスチック製の人工歯です。主に、裏面が金属になった硬質レジン前装冠と、オールプラスチックのレジンジャケット冠の2種類があります。なおレジンは、前歯の施術に限り保険適用です。
そのほか、保険適用外の人工歯として、次のような素材が挙げられます。
- オールセラミック
- ハイブリッドセラミック
- ジルコニア
上記はいずれも保険適用の人工歯より色が天然歯に近く、強度も高いです。なお、上記の中ではジルコニアが最も丈夫であり、圧のかかりやすい奥歯の治療に適しています。
差し歯のメリット

差し歯には、主に次の3つのメリットがあります。
- 負担が少ない
- 治療期間が短い
- 治療費が抑えられる
負担が少ない
差し歯は、施術する歯以外の負担がほとんどない治療法です。構造がシンプルなので、治療後の噛み合わせの違和感も少ない傾向にあります。
治療期間が短い
差し歯治療は、ほかの治療法と比べ短期間です。通院回数は平均2〜4回程度、差し歯の作製期間を含めても約1〜2カ月で治療が完了するといわれています。
治療費が抑えられる
差し歯は保険適用の治療法です。素材の選択によっては保険適用外になることもありますが、費用負担を抑えて治療したいときによく選ばれています。
差し歯のデメリット

差し歯には、次のようなデメリットが存在します。
- 治療する歯を大きく削る必要がある
- 審美性に劣る
- 脱落の可能性がある
- 丁寧なお手入れが必要になる
- 経年劣化する
治療する歯を大きく削る必要がある
差し歯を装着するには、表面に出ている歯を大きく削らなければなりません。また、歯の根っこ部分に虫歯や歯周病などの異常がある場合は、まず根治療が必要となるため、完了するまでに時間がかかります。
審美性に劣る
保険適用の差し歯は、選択できる素材が限られるため、色や透明度に違和感が否めません。保険適用外の素材を選べば審美性が高められますが、自費での治療となるため、費用負担が大きくなります。
脱落の可能性がある
差し歯は装置で固定するわけではないため、比較的外れやすい傾向にあります。入れる場所にもよりますが、食事や噛み合わせなど、ささいなきっかけで取れてしまうことがあります。万が一取れてしまったとき、自分で入れ直そうとすると変形や破損の原因になったり、虫歯や歯周病の原因になったりするため、すみやかな受診が不可欠です。
丁寧なお手入れが必要になる
差し歯による治療では、根っこに天然歯が残っているため、隅々までブラッシングしないと虫歯になる恐れがあります。また、人工歯の周囲の汚れが歯周病の原因となるので、丁寧なお手入れが欠かせません。
経年劣化する
差し歯は、歯の根っこ部分に金属を差し込むため、時間の経過とともに素材が劣化して黒ずんできます。また、金属部分が透けてみえたり、加齢や病変で歯茎が痩せて露出したりすることもあります。素材の劣化が歯や歯茎の黒ずみの原因になることもあるため、定期的な取り替えが必要です。
差し歯とほかの補綴治療との比較

歯を失ったときの補綴治療として、差し歯のほか、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3通りの治療法が挙げられます。以下では、それぞれの治療法の概要と、差し歯との違いをみていきましょう。
差し歯と部分入れ歯の違い
「入れ歯」とは、歯茎部分と一体になった、取り外し可能な人工歯です。口腔内全体の入れ歯を総入れ歯、特定箇所の連なった数本のみのものを部分入れ歯といいます。入れ歯は、主に連なった広範囲の歯の欠損や、すべての歯がないときなどに適用となる治療法です。差し歯と同じく、保険適用の治療と、より審美性や快適性、強度に優れる自由診療のいずれかが選べます。
差し歯と入れ歯の大きな違いは、装置の仕組みと見た目です。差し歯は、基本的に自由に取り外せません。また、装置自体がシンプルで、バネなどの固定器具を使用しないため、見た目も比較的自然です。
一方、入れ歯は基本的にバネで引っ掛けているだけであり、自由に取り外せます。取り外してしっかりと洗浄できるので、口腔内を清潔に保てる点がメリットです。ただ、入れ歯は歯茎を覆う範囲が広いため、口腔内にかかる負担が大きく、噛み心地や味覚の変化、痛みなどが生じることがあります。なお、耐久性は素材にもよりますが、一般的には範囲が広い入れ歯のほうが丈夫です。
▼おすすめ関連記事
差し歯とブリッジの違い
「ブリッジ」とは、失った歯の両隣の天然歯を支柱にして人工歯を装着する治療法です。歯と歯の間に橋をかけるように人工歯をつなぎ合わせることから、その名前がつけられました。
ブリッジ治療は、基本的に保険適用です。ただし、人工歯を審美性に優れる素材にする場合は自由診療となります。
差し歯とブリッジは、いずれも被せ物を用いた補綴治療ですが、大きな違いは適用条件です。差し歯は周囲の歯の状態に関係なく適用できるものの、治療箇所の根っこがないと施術できません。一方、ブリッジは根っこがなくても治療できますが、その両隣の歯が健康でないと適用が困難です。
▼おすすめ関連記事
差し歯とインプラントの違い
「インプラント」とは、人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上から人工歯を装着する補綴治療です。クラウンと構造自体は似ていますが、インプラントとの大きな違いは、以下の4点にあります。
- 適用範囲
- 保険適用の可否
- 治療の流れ
- 性能
根っことなる天然歯が残っていないと治療できないクラウンとは異なり、インプラントは歯根の有無にかかわらず適用できます。またインプラントは基本的に保険適用外で、全額自己負担です。その分、審美性や快適性に優れる人工歯が充実しており、予算や希望に応じて選べます。またインプラントでは、顎の骨に装置を埋め込む手術が必要です。手術による負担はあるものの、土台部分からしっかりと固定できます。さらに、インプラントなら、見た目や噛み心地、味の感じ方が天然歯に遜色なく、失った歯の感覚が取り戻せることも大きなメリットです。
▼おすすめ関連記事
最適な治療法を選ぶには?

最適な治療法は、治療を受ける方の口腔内の状態や基礎疾患の有無、希望、予算などによって異なるため、一概にはいえません。綿密な診察とカウンセリングの結果を踏まえ、自身が納得できる治療法を選択することが大切です。
まとめ

現代の歯科医療で差し歯というと、主にクラウンを用いた被せ物治療を指します。保険適用となり、治療期間も短いため、治療にあたっての経済的・身体的な負担が抑えられるでしょう。ただし、差し歯は歯の根っこが残っていないと取り付けられないため、適用範囲が限定的です。また構造上、外れやすく、手入れを怠るとすぐに劣化してしまいかねません。
差し歯のほかにも、失った歯を補う方法として、入れ歯やブリッジ、インプラントが選択肢となります。治療法ごとのメリット・デメリットの両面を正しく理解し、歯科医師とじっくり話し合って決めることで、後悔が防げるでしょう。
>>インプラント治療のご相談は「あんしんインプラント」へ
>>【無料】インプラントガイドブックのご請求はこちら
>>【無料】カウンセリングのお申し込みはこちら