インプラントのフィクスチャーとは?
素材・種類や埋入方法を解説
インプラントのフィクスチャーとは、治療の際に顎の骨に埋め込むパーツです。
形状や素材、表面処理の方法にさまざまな種類があり、インプラントの安定感や噛む力を左右します。
種類ごとの特徴や埋入の流れ、アバットメントとの関係性などの豆知識を紹介します。
インプラントの装置にはさまざまなパーツがあり、それぞれが相互に機能することで、天然歯に遜色ない感覚を再現しています。 今回は、インプラント装置のパーツの中でも噛む力や安定性に直結する「フィクスチャー」に着目し、役割や形状・素材の種類のほか、関連する豆知識を紹介します。
歯科インプラントのフィクスチャーについて

まず、インプラントにおけるフィクスチャーとはどのようなパーツなのか、役割や仕組みを確認していきましょう。
フィクスチャーとは
歯科インプラントの「フィクスチャー」とは、人工歯根のことです。
「インプラント体」とも呼ばれる歯の根っこにあたる部分であり、治療のはじめに顎の骨に埋め込みます。
先端部分の形状や太さはメーカーによって異なりますが、一般的には円錐型もしくは円柱型で、直径3~6mm、長さ7~15mm程度が一般的です。
埋入したフィクスチャーがしっかりと固定される仕組み
顎の骨にインプラントを埋め込むと「オッセオインテグレーション」というチタンと骨の生体反応が発生します。
治療箇所の治癒に伴い、骨との結合が進む仕組みです。
骨と結合したフィクスチャーが装置の土台となり、上部構造をしっかり支えることで、天然歯に遜色ない噛み心地を再現しています。
インプラントのフィクスチャーの素材

フィクスチャーは、主に「チタン」や「チタン合金」などの素材からできています。
チタンは、人間の骨と分子レベルで似た構造で、結合しやすい性質を持つ金属です。
異物反応やアレルギーのリスクも少ないため、幅広い方が安心して治療が受けられます。
インプラントのフィクスチャーの形状

現在使用されているインプラントのフィクスチャーには、主に次の5種類の形状があります。
- スクリュータイプ
- シリンダータイプ
- バスケットタイプ
- ブレードタイプ
- ワンピースタイプ
スクリュータイプ
「スクリュータイプ」は、側面にらせん状の突起がついた、ネジのような形状のフィクスチャーです。
本体が下方へいくにつれ先が細くなる「ルートタイプ」と、すべて太さが同一の「ストレートタイプ」の2種類があります。
現在のインプラント治療における主流の装置であり、骨に開ける穴が小さくてよく、手術時にかかる負担が少ないことが特徴です。
表面の凹凸がインプラントの結合力を高めるため、しっかりと固定され、噛む力が伝わりやすくなります。
シリンダータイプ
「シリンダータイプ」は、円筒状の形をしたフィクスチャーです。
スクリュータイプと並ぶ、主流の装置となっています。
表面積が少ないうえ、表面に凹凸がなく、顎の骨に埋め込みやすい点が特徴です。
ただ、表面がなめらかな分、固定されるまでにしっかりと時間を置く必要があります。
バスケットタイプ
「バスケットタイプ」は、内部が空洞で、側面に複数の小さな穴が開いたネジのような形状のフィクスチャーです。
空洞に骨が入り込み、より強く結合する仕組みになっています。
ただ構造上、装置自体の強度が弱く、うまく結合できないと折れてしまうことがあるため、近年はあまり使用されていません。
ブレードタイプ
「ブレードタイプ」とは、板状でT字の形をしたフィクスチャーです。
薄く幅も狭いため、顎の骨にさほど厚みがなくても埋め込める可能性があります。
顎の骨に大きな穴を開ける必要があるほか、噛んだときにかかる力が一点に偏りやすいことなどから、現在はあまり使用されなくなりました。
ワンピースタイプ
「ワンピースタイプ」とは、フィクスチャーとアバットメントが一体になったインプラント装置です。
1回の手術でフィクスチャーとアバットメントを一度に埋め込めることから、主に1回法で治療する際に使用されます。
インプラントのフィクスチャーの表面処理

インプラントのフィクスチャーには、骨との結合力を高めるため、さまざまな加工が施されています。
表面処理は、製造メーカーによって特徴が大きく分かれる部分です。
以下では、現在の臨床でよく用いられる4種類の加工方法について説明します。
サンドブラスト処理
「サンドブラスト」とは、砂のような細かい粒子を高圧で吹き付け、表面を研磨して粗くする加工方法です。
表面に付着したブラスト材を洗い流すため、あわせて酸処理が行われます。
現代の歯科医療では最もポピュラーな表面加工であり、インプラントをはじめとし、さまざまな治療で結合力を高めるために用いられています。
酸エッチング処理
「酸エッチング処理」とは、金属を腐食させる酸の性質を利用した加工方法です。
塩酸や硫酸、フッ素などの化学物質を使用し、表面に凹凸をつくることで、フィクスチャーと骨の結合を高めます。
ハイドロキシアパタイト処理
「ハイドロキシアパタイト処理」とは、フィクスチャーの表面に「ハイドロキシアパタイト」という粉末状の物質をコーティングする加工方法です。
ハイドロキシアパタイトで表面加工された装置は「HAインプラント」と呼ばれます。
歯や骨と同じ成分でできているため、短い期間で強く結合しやすいことが特徴です。
機械研磨処理
「機械研磨処理」とは、表面を専用の機械で研磨して凹凸をつける加工方法です。
インプラントの臨床応用が始まった当初は、主流の表面処理方法でした。
しかし、より優れた加工方法が登場したことで、現在は主にフィクスチャーのネック部分のみに施すケースが多いといえます。
インプラントメーカーごとのフィクスチャーの違い

フィクスチャーをはじめとするインプラントの装置は、国内外のさまざまなメーカーからリリースされています。
国内で使用されているメーカーだけでも、50〜100社があるといわれています。
インプラントの形や素材、表面構造、サイズは、メーカーによって多種多様です。
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なり、どのメーカーのインプラントを採用しているかは歯科医院や歯科医師の判断によります。
インプラントのフィクスチャーを埋入する流れ

インプラントは、2回法もしくは1回法のいずれかの術式で埋め込みます。
フィクスチャーを埋め込む手術の流れは以下のとおりです。
- 術前検診
- CT・レントゲン撮影
- 手術
2回法では一時手術でフィクスチャーを埋め込んだ後、安静期間を置いてから二次手術を行います。
手術回数は多いものの、治癒期間を長くとるため、インプラントの結合力や安定感に優れます。
一方、1回法は何度も切開する必要がありません。
手術による身体的な負担と通院回数が最小限に抑えられますが、2回法より適用制限が厳しくなっています。
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インプラント治療におけるフィクスチャーレベルとは

「フィクスチャーレベル」とは、フィクスチャーが顎の骨に埋まる位置や深さの度合いです。
主に「ティッシュレベル」と「ボーンレベル」の2種類があります。
ティッシュレベルは別名「組織レベル」とも呼ばれ、フィクスチャーの上部が歯肉組織から飛び出た設計です。
主に1回法で用いられます。
対して、ボーンレベルは主に2回法で用いられるフィクスチャーレベルです。
フィクスチャーがすべて顎の骨の内部に完全に埋まった設計のため、治療箇所の感染を防ぎやすいといわれています。
インプラントのフィクスチャーとアバットメントの関係性

「アバットメント」とは、インプラントの連結部分です。
顎の骨に埋め込んだフィクスチャーとつながり、上部構造となる人工歯の土台になります。
もしくは、治療中に治癒期間を置く際、顎の骨に埋め込んだフィクスチャーの上に被せる装置を指すこともあるようです。
アバットメントの素材は、チタンのほか、金合金やセラミックなどが使われていることもあります。
フィクスチャーと対になっていることが多く、共通規格は存在しないため、適合するのは基本的に同じメーカーのもののみです。
まとめ

インプラント治療で顎の骨に埋め込むこととなるフィクスチャーは、術後の安定感や噛む力の伝わりやすさを左右する重要なパーツです。
さまざまな種類があり、どの装置が適しているかは個々の症例や希望によって異なります。
インプラント専門の歯科医師にじっくり相談しながら、納得のいくものを選ぶことが大切です。
インプラントに関する疑問・質問は、専門医に直接相談してみませんか。
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